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量子ニューラルネットワーク開発

新しい時代の計算機を開発
10の602乗通りの組み合わせから
高精度な解を瞬時に算出

稲垣 卓弘物性科学基礎研究所

2016年10月、光計算機あるいは物理コンピュータとも言うべきマシン「量子ニューラルネットワーク」を
NTTは内閣府のプロジェクトの中で開発した。
従来のコンピュータを大幅に上回る性能を見せ、早くも民間各企業からも期待の声がかかっているという。同プロジェクトで開発を担当した物性科学基礎研究所研究員の稲垣卓弘は、この計算機から始まる未来に向けて夢を描く。

「組み合わせ最適化問題」で好成績

2016年10月、稲垣らが研究開発に参加した新しい計算機「量子ニューラルネットワーク」は、ノード数2,000の組み合わせ最適化問題の高精度な解探索に成功し、現代コンピュータを上回る性能を実証してみせた。この新しい計算機「量子ニューラルネットワーク」とは、一体どんなものなのだろうか。
「この計算機は『組み合わせ最適化問題』という難しい問題を、レーザ発振器のネットワークに起こる物理現象を利用して解いていく計算機です」
ざっくりまとめるとそういうことになると、稲垣は茶目っ気のある顔で微笑む。「レーザ光を使って物理の現象で解いていく計算機」ということで、いわゆる「量子コンピュータ」に用いられている計算原理とは異なるのだという。ジャンル分けして言えば「光計算機」というカテゴリに入るものになり、レーザ光のさまざまな性質を用いて構成された新しい原理の計算機だ。

宇宙にあるすべての原子を足した数よりも多い組み合わせ

「量子ニューラルネットワーク」には縮退光パラメトリック発振器と呼ばれる特殊なレーザ発振器が使われている。このレーザ発振器は出力されるレーザ光が強くなる途中で、例えば「上」か「下」かといった2種類の光の状態への進路の選択を行う。
量子ニューラルネットワークの中には2,000個のレーザ発振器があり、それぞれで2択の選択を行っている。レーザ発振器は単体であればどちらを選択するかは50:50の条件となるが、他のレーザ発振器と組み合わせることによりネットワーク全体でエネルギーの損失が少ない方へ出て行こうとする性質がある。例えば上向きに出ているレーザ光とぶつかるレーザ光が同じく上向きだった場合にはエネルギーが増強される。しかし上向きのレーザ光と下向きのレーザ光のように、向きが異なる者同士がぶつかった場合には、エネルギーの損失が大きくなる。
そのため、レーザ発振器は自動的にぶつかり合う他のレーザ発振器との損失が小さくなるようにお互いの状態を選択する。このように2,000個のレーザ発振器は自分で考え、ネットワーク全体として無理のない状態をつくることができる性質を持っているのだ。
「ネットワークの中には選択肢が2,000個ありますから、2の2,000乗≒10の602乗ぐらいの数の選択肢の組み合わせがあることになります。10の602乗と言われてもピンとこないと思いますが、宇宙の中のすべての原子を合わせても足りない数です。普通の計算機で、このすべての組み合わせを全部解いてからベストの答えを見つけようとすれば、膨大な量の計算が必要になり非常に大変ですが、このマシンではレーザ発振器のネットワークによって、好成績な解が自然に導きだされます」

通信会社ならではの仕組み

「既存のデジタルコンピュータの中で、こうした問題を解くのが得意なタイプのマシンでは、高精度な組み合わせを見出すのに数ミリ秒かかります。それに対して『量子ニューラルネットワーク』は100マイクロ秒以下で、高精度な解を見出しますから、速度としては50倍程度早い計算になります。また、今は2,000個のレーザ発振器のネットワークですが、この数を増やしていけば、デジタルコンピュータとの差はもっと広がっていきます」
「量子ニューラルネットワーク」に関しては、比較的容易にレーザ発振器の数を増やしていくことが可能だという。その秘密が長距離光ファイバだ。1kmの光ファイバの輪の中に、山手線の車輛のように、時間間隔をあけて2,000個のレーザ発振器が埋め込まれ、それらのレーザ発振器の間でレーザ光のやりとりをしながら、組み合わせ最適化問題を読み解いているのがこのマシンの構造だ。つまり、この輪をさらに長くしていけば、レーザ発振器の数もさらに増やしていけるということになる。
「光ケーブルの中で時間間隔をあけて光パルスを走らせるというアイデアは通信技術と同じ発想で、今回はケーブルを輪にしていますが、端を離して直線にすれば光通信ですから、非常にNTTらしい手法だったと思います」
「今はまだ練習問題として数学的な問題しか解いていませんから、プロジェクトが終わるまでには、この新しい計算機を使って社会の課題解決に役立つような解を提示したいですね」
今後は自分の手で世の中がびっくりするような面白い問題を見つけていきたいと話す稲垣の顔は、今回の成果に満足せず、さらなる未来を見つめ輝いていた。

Profile

稲垣 卓弘
2012年入社。3年前に進路を選択する機会を与えられて本研究に挑戦。NTTは「研究者として満足できる環境が整っている」と感じている。

※記事本文中の研究所名や社員の所属組織などは取材時のものであり、旧研究所名の場合がございます。

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